四つん這いからダウンドッグをするときに:フェルデンクラス的にアプローチする

昔からダウンドッグのときに胸が落ちてしまうのをよく注意されました。それがやる前の姿勢や、動くときの腕の力の入れ方などに注意しながらやっていたら、それがなくなりました。胸に意識をしているときはうまく出来ず、他のところに注意をしたら自然に胸の位置が変わりました。胸が落ちていたのは、肩甲骨、腕、脊柱や肋骨との関係でそうなっていたのです。

完成されたポーズを直されると、その位置にくればよいことはわかるのですが、動き方を変えずにその位置に行くことは難しい。なぜなら、動きにその人の癖が深く関わっていて、それがポーズの邪魔をするからです。

よくある動きのパターンを例に、四つん這いからダウンドッグをする動画を撮ってみました。

 

その1:この動画の中では一番楽に動いています。体の伸び方が他と違います。腕も楽です。

その2:腕に力を入れて持ち上げているので、腕や肩、肩甲骨周りに力が入っています。腕がつらくなってきます。

その3:最初から体が落ちていて、完成ポーズもその形のままです。胴体がぶらさがっていて体が伸びにくい状態です。

その4:動き始めに体の真ん中くらい(お腹の上部)に力を入れています。体が丸くなるので重さが腕にかかりきつくなってきます。

その5:動き始めにおへその辺りに力を入れています。4と同じで腕がきつくなります。

最後のポーズは見た目では少し違いがわかりにくいかもしれません。けれども、自分の感覚としては動き方によって感じる腕の重さやからだの伸びは全然違います。その2からその5のような動きは、前述したようにその人の姿勢や動きの癖が大きく関係しています。その癖は無意識に行なわれるので、ほとんどの場合やっている本人は指摘されるまで認識していません。

「ハタヨガの真髄 600の写真による実技辞典」 B.K.S.アイアンガー著 沖正弘監訳には、ダウンドッグ(アドー・ムカ・シュワーナアサナ)の効果として下記のように記載されています。(P124より引用)

“疲労したときにこのポーズを行なえば、疲れがとれ、心身に生気がよみがえる。(中略) 肩胛骨周辺のこりをやわらげるのに効果があり、肩の関節炎を治す。腹部の筋肉を締め、強める。横隔膜が引き上げられるので、心臓の鼓動もととのう。気分を爽快にするポーズである。(以下略)”

けれども、動画の2~5の例のように余計な力が入っていると、完成したときに力みで短くなった部分はそのままです。肩胛骨周辺のコリはとれず、腹部の筋肉は適切に使うことができず、腕は重くなり、気分はなかなか爽快になりません。

無駄な力が入っていない方が、より床を押すことができ、より伸びることが出来ます。無意識の力は最初から入ります。自分が何をしているのかを探るために、丁寧に注意深く動きはじめの部分だけをやるのも一つの方法です。ぜひお試しください。